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佐野元春のザ・ソングライターズ シーズン4 Vol.9・Vol.10

'12/11/30,12/7 放映 NHK Eテレ

佐野元春のザ・ソングライターズ  ゲスト:なかにし礼(Vol.9・Vol.10)

「ホピュラー音楽のソングライターこそ、現代の詩人」
「ポップソングは時代の表現であり、時代を超えたポエトリー」

そんな佐野元春の言葉で始まる「ザ・ソングライターズ」。
4thシーズンのゲスト、5人目はなかにし礼。大ベテランの登場です。

今回もダイジェストで書き起こしです。



立教大学卒、佐野の先輩でもある。十代の頃、シャンソンの訳詩で学費を稼いだ。
1957年から63年の25歳になるまでの間、1000曲以上のシャンソンを日本語に
訳した。詩を訳することで詩人の魂を理解することが出来、後の創作活動に役立
ったという。


ポエトリーリーディングは「詩人たち」。
フランスのシャンソン歌手、レオ・フェレの歌を学生時代のなかにし礼が訳した。


初めて自分でつくったオリジナル曲は1966年「涙と雨にぬれて」。40万枚の大
ヒットとなった。
 「僕のヘナチョコな曲にアレンジがついて、そしてプロの歌手が歌うという場
  面をスタジオで味わったんですね。それ見たらね、その瞬間「いやー、ちょ
  っと歌書きはやめられないな」と、まず思いましたね。なぜかって言うと、
  歌を作るということは、とにかくこの世にいまだ産声の挙げたことの無い、
  ひとつの歌という、ある種、命あるものを生み出すっていうこと。この喜び
  は他のものに比べ難い。ということをその一曲のレコーディングの場所で感
  じました」


なかにしさんの作品の中では少し異質かなと思うんですが、「ハルピン1945年」
という曲があります。これはデューク・エイセスのレコードがよく知られていま
す。この曲は子供の頃、ご両親と満州で暮らしていた時の歌ですね。この時の経
験は、その後のご自身のソングライティングに影響していますか?

 「ええ、もちろんですね。僕自身としては戦争を体験した。死なずに帰って来
  た。自分たちが生まれて育った旧満州という国が崩壊するのを見た。そして
  国境を越えたことによって中国人たちを理解したし、日本人であることも理
  解した。つまり国境を越えたことによって人間同士がいかに変わらぬもので
  あり、また変わってはならないものであるかということも理解した。いろん
  なこと、日本にいて育った人たちが経験し得ないようなことを、僕は若いう
  ちにたっぷりと経験させてもらったということがね、逆に生きていればこそ
  感謝し、また、日本に帰って来てから冷たくされたことによって、僕自身が
  どんどん鍛えられて逆に強くなったということと、人の経験していないこと
  を自分は経験したんだから、その分、自分が人と違うという意識ね。自分は
  周りの子どもたちと一緒じゃないんだ、違っているかも知れない。違ってい
  るとすれば嬉しいことなんじゃないかと。では、そのことにどういう表現を
  与えていくことが、僕の生きる道だろうかなと考え始めたのが高校時代で」
今回、なかにしさんをゲストに迎えるにあたって、これまで書かれた作品を全部、
読ませて頂いたんですけれども、また、聴いてみたんですけれども、そこに登場
する男性、女性、共通しているのは何かそこはかとない流浪の魂を持ったものと
いうか、さすらう者の愁いのようなものを皆、一様に持っているように僕は感じ
たんですね。このことと、なかにしさんが幼い頃に経験したことと、何か関連は
あるのかなと思って、お伺いした訳ですが。

 「それはもう大いに関連があって、それ以外の歌は書けないのかっていったら、
  書けないんでしょうね。きっと、歌を書くということは、いろんな注文に応
  じて書いてますけどね、それは注文に応じてハイハイと言っているだけで、
  書く瞬間から自分自身との対決になる訳ですから。そうなった時に、人様の
  意見なんて実はもう関係ない訳で。人様の意見がちょっと入って来た瞬間、
  歌そのものが汚れますから、そういうものを排斥していくわけです。結局、
  自分自身の世界の中でどう言葉を集め、言葉を取捨選択して作品を作り上げ
  れるかと。僕にとっては、非常に重要な感覚のありどころなんですね」
  
  
ソングライターとして、自身の歌の影響力について意識していたか、という問い
について。
歌が人々の耳から入り、心に至ってどんな卵を産み付けるかは判らないけれど、
もし自分の書いた歌が有精卵であったら…有精卵とはひらめきのある言葉が有精
卵であり、テクニックだけで生み出された卵は無精卵。ひらめきのこもった歌は
有精卵で、必ず人々の心の中に入って別の卵を産みつけ、その人たちの命となり、
血となり肉となり、何らかの影響を与えるに違いないという、思い、祈りが歌を
書かせている。と語る。


なかにし礼の代表作「時には娼婦のように」。NHKとテレビ朝日は放送禁止措置
をとった。が、NHKラジオに出演依頼があり、歌詞を朗読したという。読めば、
純粋詩であり、許容範囲だと。歌となれば、問題だと。

それは面白いことですね。言葉と音楽の関係についてということだと思うんです
けれども、以前、お会いした時なかにしさんは、江戸川乱歩の詩論を引用されて
いたんですね。「言葉と音楽が拮抗した結果、そこにポエジーが生まれる」とい
う考えですね。詩は詩だけで独立しているのではなく、そこにハーモニーやメロ
ディがつくことによって、また新たなメッセージを発する。このことについて、
少し詳しく聞きたいのです。これ、とても面白いところなんです。「言葉と音楽
が拮抗した結果、そこにポエジーが生まれる」というところですね。

 「ここに詩があって、ここに音楽があって、このお互いが歩み寄る場合があり、
  また、音楽を求める詩があり、詩を求める音楽がある、という場合がありま
  すよね? じゃあ詩がね、どんな詩でもいいのかっていうことじゃなくて、
  ここにある音楽と拮抗して、要するに両横綱でなきゃいけないんだけれど、
  両横綱ががっぷり四つになって、それでしのぎを削って、もうもみ合って、
  そしてストラグルすることによってね、詩も曲も天上に向かって立ち昇って
  いく……というのが江戸川乱歩の詩論の中に書いてある。要旨をいうならば
  そういうことですね。その時に彼が言うのは、詩はより純粋になる、という
  言い方もしているし、音楽もより純粋になる。だから、詩も曲も…詩と曲が
  合体して…これ成功した場合の話ね。ストラグルを続けることによって天上
  に向かって上昇していく、ということが歌の… 生まれるべくして生まれた
  歌の有り様だと思いますね」
なるほど。



定型質問。
好きな言葉はありますか?
 「光」
嫌いな言葉は?。
 「……戦争」
日常暮らしていて、うんざりすることは何ですか?
 「日常生活」
逆に一番嬉しいことは何ですか?
 「恋ですね」
よい曲が出来た瞬間はどうですか? 恋に勝りますか?
 「恋に勝りますね」
女性から言われて嬉しい言葉。
 「愛してる」
そうですね。死ぬ前に愛する人に残す伝言は?
 「ありがとう、ですよね」
どうもありがとうございます。


以前お会いした時に、「ソングライティングは99%の技術と1%のインスピレー
ションで出来るんだ」って、おっしゃってたんですね。改めてお伺いしたいんで
すけれども、ソングライティングにおいてインスピレーションというのは、なか
にしさんにとってどういうものなんですか?

 「別に天から降ってくる訳では無くて、天から降ってくると思わせるほどやや
  神秘的な、自分の脳の嵐ですね。脳が猛烈な回転で回っている時に起きる火
  花のようなものを、パチッと捉えるこちら側に瞬発力があれば、それがひら
  めきとなるであろうと思うんですね。理性であっても情熱であっても、99%
  まで仕上げることは練習すれば誰でも出来ると思う。その1%のひらめきを、
  じゃあどうやって待つか、ということになる訳で、これが大変なんですよ。
  自分が自動的にそれを持ってくることは非常に難しいんだけれど、でも訓練
  によって、それは来るはずなんだと思っていることが、実は作品作りなんで
  すよ」
分かります。これも今おっしゃってた啓示と言うか、インスピレーションに関す
る質問になると思うんですが……

 
 ここで「石切挽歌」という、1975年に北原ミレイによってヒットした曲につ
いて、佐野が質問する。なかにしは、全体の構成はほぼ出来た、しかしその1%
のひらめきが足りないと、仕上がってから一週間はのたうち回って考えたという。
 「で、考えているうちに、『オンボロロ オンボロボロロ』という言葉。オン
  ボロという言葉は日本語にあったけれど、オンボロロという言葉は日本語に
  なかった訳で、これは僕の造語なんですね。オンボロボロロっていうのも無
  い訳で。つまり、造語であるけれど通用する造語っていうのかな。それを僕
  は思いついて、これだ、と思った瞬間ね。もう…それこそ、光に包まれまし
  たよ。この歌が、周囲に流れ、そして人々に愛されるという瞬間がもう見え
  ましたね」
つまり、その言葉で普遍性を獲得出来たのではないか、という確信ですよね。
 「直感し、確信した。ということですね」
なるほど。
  


ワークショップ。
今回のテーマは「ヒット曲を作る」。
なかにし礼の作品を題材に、学生たちがオリジナルの詞を作る。

まず課題曲その1。

 顔も見たくないほど
 あなたに嫌われるなんて
 とても信じられない
 愛が消えた今も
 埃にまみれた「    」
 愛されて捨てられて
 忘れられた部屋のかたすみ
 私はあなたに命をあずけた

この「  」に入る言葉を創作する。
紹介された学生の作品は以下の2つ。


弾けなかったギターのように
 「「のように」はなくてもいいなと思うな。弾けなかったギター、と投げ捨て
  てしまった方が、ギターが聴いてる人のイメージにはっきり浮かぶと思う」

ジグソーの一片
 「ジグソーという小道具が歌には比較的使われていない新鮮さもある。いろん
  な解釈もできる。この一片が使われることを忘れられてて、ついにパズル全
  体も完成しなかったともとれる」
  
ちなみに、なかにし礼のオリジナルでは「人形みたい」。([人形の家]より)


課題曲その2。

 嫌われてしまったの愛する人に
 捨てられてしまったの紙屑みたいに
 私のどこがいけないの
 それともあの人が変わったの
 残されてしまったの 雨降る町に
 悲しみの眼の中を あの人が逃げる
 あなたならどうする あなたならどうする
 「       」
 あなたなら あなたなら

 
紹介された学生の作品は以下の2つ。


白黒になったこの世界を
 「実に的確だしイメージにあふれているしね。いい言葉だなと。あえて褒めま
  すよ」

道に咲く雑草 見つけたならば
 「恋すると、人は自分を矮小化して考えるもので、俺は立派だからついてこい。
  というのは恋じゃない、ただ威張っているだけ。そういう思いに、道に咲く
  雑草を例えているのは僕は気に入った」
  

なかにし礼のオリジナルでは「泣くの 歩くの 死んじゃうの」。
いしだあゆみの大ヒット曲[あなたならどうする](1970)。


課題曲その3。

 追いかけて追いかけて すがりつきたいの
 あの人が消えていく雨の曲がり角
 幸せも思い出も水に流したの
 小窓打つ雨の音 頬ぬらす涙
 「       」
 つかのまの戯れと みんなあきらめて
 泣きながらはずしたの 真珠の指輪を

 
これはザ・ピーナッツ[恋のフーガ] で、オリジナルでは
「初めから 結ばれない約束の あなたと私」。

セレクトされた学生の作品は以下の2つ。


ずぶぬれの傘 わたしを見ないで
 「(学生は、部屋に帰ってきて泣いてる女性が、玄関に立てかけた濡れた傘に
  わたしを見ないで、と言っていると説明。なかにしは、まだ歩いて帰ってい
  る最中で、傘を差しながらの思いだと解釈)いくつかの違った解釈が出来る
  のはいいことだ。「わたしを見ないで」という思いが大事だなと思いますね」

なかったことにしてもいいでしょうか
 「とっても素晴らしいですよね。これで一曲書いてみたらどうですか? とい
  うのは過去のヒット曲にこのフレーズないから。サビの文句とか決まり文句
  とかに。出だしにつかう言葉じゃないかも知れないけれど、フッキングの力
  ありますよね」
  

ここで、このオリジナルである「恋のフーガ」について説明するなかにし礼。
この「フーガ」とは遁走曲の意味。曲の構成が第1主題が始まると、1小節遅れ
て同じ旋律が反復するように追いかけるつくりになっている。これが「追いかけ
て追いかけて すがりつきたいの」という歌詞に繋がり、テーマの核になってい
るとのこと。



学生からの質問。
60年代から曲作りで変化したことは?という質問に、
当然変化している。例えば会場の大きさによってでも大きく変わる。小さなバー
で、EPレコードが片隅で回っているような場所では細川たかしのような声は似合
わない。ささやき系の歌ばっかりだった。日本が豊かになってきて、キャバレー
とかナイトクラブとか、空間が大きくなってくるとそこにふさわしい声量が求め
られる。僕はその時代にふさわしい仕事をしてきたと思う。と答える。
 「今、インターネットの時代でユーチューブを開けば、全世界の音楽が全部聴
  ける。ここにはトスカニーニもいればマリア・カラスもいる。いろんなのが、
  素人の歌手もいる。百花繚乱というか、全てが均等に並んでいる。そこには
  佐野元春もいるんですよ。そこで彼は闘って闘い抜いて、今あるということ
  は大変なことなの。これは。ということは、あなた方もこれから歌を書くに
  ついては、もう世界戦争の中に飛び込んでいくんだぞ……という、そういう
  思いを持って筆を執らないと、とんでもないよ。それはね、そうなることに
  よって一体何が必要になるかっていうと、99%の作家魂が必要なんだよね。
  ヒットメーカーは、職人技的な技を必要とするから「99%の技術」なんです
  よ。でも21世紀に入ってからの作家は「99%の作家魂」。あと1%のひらめ
  き、だと思うの。だから佐野さんなんかがやってる仕事というのは、非常に
  文学に近いし。作詞はね、詩がね。で、音楽も新しい音楽だよね。新しい音
  楽に近い。それらを全部ひっくるめて、世界を相手に闘っている。売れてる
  のは、日本であろうとそれは関係ない。だって買う人は自由なんだもん。パ
  ンと開けば、ガガもいればいろんなのがいるの。北島三郎もいるし、みんな
  がんばってる。そこで佐野元春を選んで、ダウンロードしたりして買う、と
  いうアクションを起こさせることは大変なことなの。そういう意味で、僕は
  (佐野を)大変尊敬していますね」
ホントに、それはとても勇気付けられる言葉ですね。僕を含む同時代の、言葉と
音楽に格闘しているソングライターは沢山いるんだけれども、その彼らにとって
も今のお話というのは大変勇気づけられるお話で、どうもありがとうございます。
とっても嬉しいです。





さすが、というべきでしょう。なかにし礼の発言はどれも興味深く、聞き入って
しまいました。ここで全て文字起こししたくなるぐらい(笑)。

さて、最後の講義はゲスト不在の模様です。佐野元春自身がソングライティング
について語るとのこと。楽しみです。



佐野元春のザ・ソングライターズ(第4シーズン) 
NHK・Eテレ 毎週金曜 23:00〜23:29(再放送は次週木曜 0:30〜0:59 )
===================================


← ザ・ソングライターズ シーズン4 Vol.7・Vol.8(ゲスト 山崎まさよし) へ
ザ・ソングライターズ シーズン4 Vol.11・Vol.12(最終回) へ




テーマ:NHK - ジャンル:テレビ・ラジオ

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