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ドラマ キルトの家

'12,1,28・2,4 放映 NHK総合

NHK土曜ドラマスペシャル『キルトの家』前・後編 感想
「魂の話をしよう!」
一体、どんなお話のドラマなのか、さっぱり判らなくて不安にさせる予告で
したが(笑)。

脚本は山田太一ということで安心のブランド。それだけでもう一定のクオリ
ティは保証出来ると言っていいでしょう。本作も地味ではありますが、満足
出来るドラマでした。少々、説明的なセリフが多い印象はありましたが、そ
の独特なセリフ廻しも、山田太一脚本の面白さの一つでもありますし(笑)。

山田太一シナリオは、「今そこにある問題」を作中に取り入れる巧さが魅力
だと思います。本作品も、かつては活気があり、高度成長期を支えた団地の
老朽化と住人の高齢化、という問題が企画の前提にあると思われます。


住人が高齢化し、老人が多くなると、バリアフリーにも対応出来ていない団
地は住みにくくて不便なことが一杯です。そこで自治会の副会長、余貴美子
扮する米川淑子はお互いに助け合おう、若者に援助を頼もう。と気軽にボラ
ンティアを浸透させる為に「助け合いクーポン券」の制度を作り、広めよう
とします。

しかし、一括りに「年寄り」として扱われることをよしとせず、一人の人間
として、今までと同じ様に個々の生活を大事にしたい、と考える老人たちも
いて、そんな人々が集まる「砦」が「キルトの家」となるわけです。
思えばキルトとは、小さな端切れがいろいろ集まって一枚布となるのですか
ら、孤独の寂しさを埋める為に寄り集う老人たちの象徴かも。


高齢者には介護が必要、助けてあげないと。そう思われることが嫌な老人も
いて当然かも知れません。そして彼らは「助けられる側」の存在ではなく、
「助ける側」の存在になれるんだ。と言いたいのかも。

そこに現れたのが、南レモンと空(しかしこの名前、なんとかならんか…(笑))
の若夫婦でした。


ここでこのドラマは、もう一つの「今そこにある問題」を提示します。
3.11。あの東日本大震災です。

若者二人は、旅行中に震災にあい、津波に出会った。荷物は全て流された。
泊まっていた民宿の家族6人は全員行方不明。

二人がその体験を語るシーンは、観ているこちらも胸が痛くてたまらなくな
りました。

安易なドラマなら、ここであの時の映像をインサートしたかも。しかし、こ
の作品では、波間の漂流物の中に、二人の写真が浮かんでいるカットが何度
か映し出されるだけでした。ここにこの作品の良心を感じました。

まだあれから、一年も経っていない現在、劇中でそうそう簡単にはあの津波
を描けないでしょう。何年かしたら、東日本大震災を扱ったドラマや映画も
創られるでしょうが、まだちょっとデリケートすぎる題材です。
(そういう意味で、映画「ヒミズ」には個人的には抵抗を感じます)

旅行者として、あの津波を体験した。荷物は失い、5日間避難所で暮らした
けれども、家族を失ったわけではない。

2012年のドラマとして、山田太一はこのレベルまでしか描けない、と判断
したのだと思います。私はそれを支持します。


新たな住人である若者二人に、キルトの老人たちは「助ける側」になろうと
します。お米を持ってきたり、話し相手になろうとしたり。

適度な距離感で、こういう交流は必要ですね。あくまでも、適度な距離感で
なら(笑)。実際、劇中の二人は人生の経験値が高い老人たちの言葉に助けら
れ、逆に若者の一言で、老人の長年屈折した心情が晴れやかになる。


明日どうなるか判らない。老人たちにとってはリアルな問題です。実は若者
だってそうなのですが。そして、突然その日はやってくる。

一人は大阪の息子夫婦の家へ、一人は栃木の老人ホームへ、一人は横浜の病
院へいくことが同じ日に知らされる。更には、キルトも買い手が現れ、キル
トの家も閉じられることに。

ラストは残った者たちが公園に集まり、また日々の暮らしが始まり、繰り返
されていくことが描かれて終わります。こんな集いにはいつも離れて端っこ
にいた橋場が、いつのまにかちゃんと加わっていて(笑)。それなりの変化は
生まれているようです・・・・



いま、描ける範囲で3.11を描く。人と人との繋がり、絆を描く。
脚本家として、ドラマ人として、3.11を無視して今の日本を描くことなどは
出来る筈も無い。でも、傷つき、失った被災者の方々をさも理解しているか
の様に図々しく登場させ、描くことも出来ない。

この「キルトの家」は2012年作品として、3.11に対して絶妙な距離感で向
き合っている作品ではないかと思います。そしてそこに高齢化社会という課
題も描いている。傑作・名作とまではいいませんが(笑)、やっぱり御大山田
太一は凄いよなぁ、NHK土9ドラマはいいよなぁ、と感じさせる作品でした。




【 キルトの家 キャスト 】

▼キルトの家に集う人々
橋場勝也:山崎努 
 …かつて南米で働いていた。いつも集団から少し外れたところにいる複雑な性格。
南(みんなみ)レモン:杏 
 …夫の空と共に、団地に短期入居してきた。トンカツ屋でパート勤務。
南(みんなみ)空:三浦貴大 
 …レモンの夫。兄に教えられた自動車の整備・板金の仕事に誇りを持つ。
桜井一枝:松坂慶子
 …「キルトの家」の中心的存在である、いつも明るくおおらかな女性。
沖山志津:佐々木すみ江
 …かつては新橋の芸者で、三味線が達者。
沢田道治:織本順吉
 …元・区役所の公務員。やさしく控えめな性格。
下田美代:正司歌江
 …一人でいたい、と虚勢を張るが、故郷の大阪の息子と暮らしたがっている。
伊吹清子:緑魔子
 …夫が事故死、再婚の夫も癌で他界。息子も海外勤務で一人寂しい暮らし。
河合秀一:北村総一朗
 …かつては時計屋の主人。ゴミを拾って修理したり、オブジェを創るのが趣味。
野崎高義:上田耕一
 …短気で物言いは荒っぽいが寂しがり屋。若い頃は裏稼業にいたことも。

綾乃:根岸季衣
 …スナックのママ。話好きで少々そそっかしい。
米川淑子:余貴美子
 …団地の自治会副会長。高齢者の為に助け合いクーポン券を普及させようと奮闘。
南 大地:新井浩文
 …空の兄。実はレモンの夫だったが、DVで弟と逃げられた。
睦美:猫背椿
 …スナックに大地が連れて来た再婚相手の女性。


脚本:山田太一 
音楽:加古 隆
劇中詩:「burst 花ひらく」吉野 弘(※あの「魂の話をしよう…」です)
制作統括:近藤 晋、谷口卓敬、後藤高久
演出:本木一博
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テーマ:ドラマ感想 - ジャンル:テレビ・ラジオ

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