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佐野元春のザ・ソングライターズ サードシーズン Vol.11・Vol.12

'11/7/2,9 放映 NHK教育

佐野元春のザ・ソングライターズ  ゲスト 七尾旅人(Vol.11・Vol.12)

「ホピュラー音楽のソングライターこそ、現代の詩人」
「ポップソングは時代の表現であり、時代を超えたポエトリー」

そんな佐野元春の言葉で始まる「ザ・ソングライターズ」。
3rdシーズン六人目、最後のゲストは七尾旅人。
いつもと違う展開でしたが、最後に相応しい傑作プログラムでした。


では抜粋の書き起こしです。


リーディングは「戦闘機」

七尾さんがデビューした90年代末からゼロゼロ年代初頭の頃っていうと、メジャー
なレコードカンパニーが崩壊を始めた頃でしたよね。メジャーに対する失望があっ
たと思うんですけど、それはどんなものでした?

 「メジャーに対してなのかは判らないですけど、世の中への失望は満ち満ちてま
 した。当時は前時代的な、とにかく経済経済で走って来た日本が鼻をへし折られ
 て、そこからデビューした。最初に鼻へし折られたのがバブルの崩壊だと思うん
 ですけど、バブルが崩壊したのはまだいいとして、オウム事件とか、阪神大震災
 が前後して起こるんですけど、あの事件が13,14歳とかで自分の心象風景が凄く
 打撃を受けた感じがあって、そこからなんですよ、僕が曲を書き始めたのは。日
 本が今まで繋ぎ留めていた幻想が完全崩壊したとこで。そこで、なんて言うんだ
 ろう…新しい、言葉なり、リズムなりメロディーを紡いでいかなきゃいけないん
 じゃないかっていうことを強く思ったんですよね。
この現実をどうにか、言葉やメロディーで凌駕したい?
 「うん…この日本は今までのやり方とか、言葉とか音楽では上手く現状を捉え切
 れないようだと」
新しいやり方でやってみたい?
 「はい。日本の今までのフレームが徹底的に壊れてしまったので、ポップスとか
 音楽の領域が、何だろな、…随時して補完し合わなきゃいけない、って言うか…
 ここはあの、まだずっとテーマとして追っているところなんで上手く言い尽くせ
 ないところなんですけど、そこから自分は始まったな、というところはあります」
 

定型質問。
好きな言葉
 「歌、ですね」
嫌いな言葉
 「さっき毛虫って言おうと思ったら、皆に笑われたんで…不可能とか」
毛虫でいいじゃないですか
 「じゃあ毛虫で(笑)」
ウンザリすること
 「マシントラブルです。一人でレコーディングしてて一番辛いのが、機械オンチ
 な自分に降り掛かって来るマシントラブル。どうしても困った時だけ、友達のエ
 ンジニアに聞いてたんですけど、結構ウザったがられるんですよね。だから最近
 ツイッターで知らない人に聞いてます。素人のマニアの方が遥かに詳しいんです。
 凄い時代ですよ。何万人とその音楽を作っているような」
他になりたかった職業
 「女性シンガーソングライター。曲の3分の1は女言葉なんですよ歌詞が。それ
 何でか判んないですけど、アルバムに入ってないお蔵になっている曲に女言葉が
 たくさんあるんです」
人から言われてカチンとくる言葉
 「音楽って無くても死なないじゃん、嗜好品だから。って、あれクリエイターの
 若い子が言ってるの見ると怒りますね。他の人が言うのはいいんだけど、作って
 る人がそれ言うと、お前それ違うよ、って言います。音楽は衣食住より大事だよ
 って。酸素よりも。政治家とかがいくら腐っても日本は大丈夫なんです、音楽が
 あれば。でも音楽が腐り始めるともう、その国は保たないですね」
それ音楽だけに限らず、アート全般に…
 「勿論そうです、カルチャー全体です」
その通りだね。女性に言われて嬉しい言葉
 「意外とワイルドね、みたいな」
死ぬ前に愛する人に残す伝言
 「去っていく者のことはあまり捕われ過ぎずにいて欲しいなと。自由に気ままに
 恋愛したりとか、遊んだりとかしたらいいんじゃないかなって。死んだ後足かせ
 になるのが一番イヤですね」
どうもありがとう。


子供とはどういう存在ですか?という佐野の問いに、赤ちゃんはロックンロールを
越えた存在、と語る七尾。子供を見てると太陽を、惑星を恒星を見ているようで、
一緒に遊んでいるとパワーを貰う、とのこと。

天使という言葉が詩によく出てくるが、天使は何の象徴か?という佐野の問いには、
子供の頃はキリスト教のバックボーンがあった、初期の頃にはよく出て来たが途中
で嫌になり、仏教的なことを勉強してそれからは出さなくなった。でも宗教的なも
のを抜きにして、天使にはかすかな希望、かすかな煌めき、ファンタジー。そんな
意味で使っていたと思う、と答える。


七尾は、「DIY STARS」というウェブサービスを昨年始めた。アーティストがイン
ターネットで作品を有料で配信する際、収益のほぼ100%を手にすることができる
サービス。多くのアーティストが利用しており、新しいウェブサービスの形として
注目を浴びている。

 「今までの配信形態って何がツマンナイかっていうと、CDの売り上げが落ちたこ
 とを補填するための消極配信だった。でも積極配信もあるんじゃないかって」
もちろん。
 「つまり配信じゃないと成立し得ない表現。というのがもうネット上に溢れてい
 ると思う訳。YouTube とか見てももの凄い重要な価値をおびてるのに、20世紀
 音楽の現場からあれは未だに敵役なんです。でも時代は既に21世紀音楽に移り変
 わっていて、そこでは配信っていうのはCDの負け戦、後退、死んでいく速度を遅
 めるものであってはいけないんです。むしろ、音楽自体を活性化して結果的にCD
 を助ける様なカタチが望ましい。なので、配信じゃないと絶対に成立しない想像
 力が必要なんです。それが積極配信といってDIY STARSで一番やりたかったこと
 なんですけども」
現在のポップカルチャーはYouTubeやUstreamだった、そう言えるのでは?
 「そうですね」
そこから生まれてくるアート、言い換えてみればファンタジーを、僕たち生み出せ
るかも知れない。

 「全くそう思いますし、20世紀のポップカルチャーは死んでない、って言うか、
 形骸化してない、と思ってて。20世紀のあのキラ星の様な楽曲たちは完全に生き
 残ってて」
もちろん。
 「今もサイコーですよね。しかもそれはレコードじゃなくてネット上に乗っかった
 ことで増々消えにくくなるんです」
ビートルズ、ストーンズ、ディラン、そしてソウルミュージック…
 「そうです。佐野元春もそうです」
もちろん、…あ、そうか。嬉しいね。
 「そうです。それで、そういう系譜が生き残ってて何がダメになったかって言う
 と、ポップシステムなんです。レコード会社のポップを供給するシステムが壊れ
 たんだと思うんです。ポップカルチャーはチョー生き残って、ガゼン生き残って
 ると思います。そのポップシステムが壊れたんで、今の若い子たちはレコード会
 社からデビューしてもちゃんと活動出来るか分からない。契約費ちょっとしか貰
 えないのに全人生的に契約でがんじがらめにされることもありうる。昔みたいに
 ここからデビューすれば安心だな、っていう選択肢は無くなっている。だから、
 一時的にはスターが生み辛くなっているというか、ポップシステムが稼働してな
 いけど、ポップカルチャーは生まれ変わって、今、大漁期ですから。芽吹く瞬間
 に入ってて」
ハイ(大きく同意)
 「60年代のポピュラーミュージックは一握りの天才のためのものだったけれど、
 今のポピュラーミュージックは、あらゆる人間に開かれつつある。本当の意味で
 音楽はポピュラー、不変をおびるようになった。誰の手元にも行き渡るような、
 行動を取っていかなきゃならないと思うんですけれど」
そうした有様を通して、僕たちクリエイターはその先に何を夢見るんだろう?
 「僕はいろんな夢が現れては消えていくんだと思いますけど…」
僕はファンタジーですね。
 「ファンタジー。ですねやっぱり。昔はレコードの中に永遠を閉じ込めたんだけ
 れど、今は永遠のまま世界の裏側まで一緒に到達するんですね。そう言う意味で
 は音楽は評価されているんです本当は。バイナルも消えてない、CDも買おうと
 すれば買えます。で、オンラインにも、僕のWAVファイルが音質劣化せずにアフ
 リカまで到達するんです。そういう意味じゃ音楽は全く弱まってないし、衰弱し
 てないので俺は希望的なんですけど。20世紀ポップスシステム的な側から見ると
 ヤバい!って(笑)」
ああ。
 「かたっぱしから告訴!みたいなことになってるんですよ。でもきっと、これか
 らも色んな世界で色んな子供たちが、きっとじゃなくて確信してるんですけど、
 確実に皆な音楽を愛するんです。この流れは止められないですね。だから、イン
 ターネットじゃなく違うものになったとしても、安心しているし。で、必ず才能
 のあるところには、なんかイヤらしい言い方ですけど、お金みたいな物も発生し
 てくると思うんで、本当に音楽が好きで音楽の才能がある子が、食いっぱぐれて
 しまうのかっていうと、僕はきっと手だてが出てくると思うんです。DIY STARS
 も、その内の一つの試みで、これがベストと思ってやってる訳じゃないんですけ
 ど、まあ色々試していけば、その内きっと。自分はそこそこやれているからいい
 んですけど、五歳くらいの天才児が、音楽やっていきたいんだけれど、やれない。
 みたいな世界にはしたくないんで。なんか20世紀とは違うカタチで。そういうこ
 ともちょっと考えています」
 


ワークショップ。
七尾旅人が震災後に作った「圏内の歌」に対する返歌・アンサーソングとして四行
詩を作成する。

佐野と七尾が7人の詩をセレクトし、それを一つのストーリーとしてまとめ、即興
のパフォーマンスとして佐野と七尾が歌い、語る試み。


 昔 住んでいた僕の街
 おかあさんが話してくれる
 遠く遠く記憶の中の街
 僕は知らない あの街

 ふりつづけるのは ははのあめ
 ふれてはいけない ほねのあめ
 いまだけ わすれてしまおうか
 ずっと わすれないようにね

 泣いている 僕の子供 壊れてく 僕の体
 描く未来と対照的な 色の無い音だけが僕を照らす
 汚れた親元を離れた今 ぼやけた視点で何を思うの
 雨と涙で育った花が ほら 冷たく笑っている

 見えない境界線を超えて
 君は圏内へと忍びこんでゆく
 誰もいなくなった町の中で君は
 無くした言葉を探している

 東京。ここにいても どこにいても、きっと圏内。
 圏内。圏外? 圏内…

 もう誰のせいでもない
 首相でも 神様でも 文明でも
 望むのは 犯人さがしの ののしり合いじゃない
 ただここで泣くこと 笑うこと 愛すること 生きることを許して
 ただここで泣くこと 笑うこと 愛すること 生きることを許して

 いつか戻るよ この家へ
 面影が残っているとは思わない
 いつか戻るよ この家へ
 面影が残っているとは思わない
 新たな土地で生きていく
 それでも戻るよ この場所に



佐野元春による詩の朗読=スポークンワーズに、七尾旅人の歌とギターとSEが加
わった、と言えば伝わるでしょうか。
二人のセッションに会場の学生は完全に引き込まれていました。
終了後、佐野が無言でうなづき、七尾にOK,と握手を求めた時の満足げで優しい
笑顔が印象的。

学生の感想
「言葉の意味と二人のエネルギーとで、胸が一杯で苦しくなった」
「エネルギーを強く感じて、今、辛い状況にあると思うけどそれでも、未来に希望
というか、輝きがあることを願わずにはいられない」
「メロディーがつくところもあれば、語るところもあれば、繰り返すところもあり、
エフェクトがかかるところもある。言葉の表現の仕方によって、意味も違ってくる
し、伝わり方も変わってくる。それによって7名の詩がより深いものになったので
はないか」

パフォーマンス中に何を考えてました?と佐野に問われた七尾
 「どんなことでも考えるし、どんな風にも鳴らしうるので、それであれば、より
 意思を表明し、意思を介在させる方向に行きたいなと思って。なるべく動的な方
 向に動かせればな、と思ってました。音楽っていう時間と空間の流れをね。
 本当は今すべきことは150枚、詩があったら全部採用することだったと思うんで
 す、本当は」
勿論。ハイ。
 「例外的な、小さな片隅で鳴り続ける、独りぼっちで叫び続ける、イチの声を無
 視しないのがロックだと思うんで。独りぼっちの声っていうか、大多数に混じり
 得ない声っていうか。でも、今日の150枚全部そうだったと思う。凄いパーソナ
 ルな、一個一個輝きを帯びた言葉だった。一枚一枚、もう一度じっくり再読して、
 曲を想像してみたいです、頭の中で」 



学生からの質問。
震災をきっかけに、日本人の価値観はどう変わっていくのでしょう?
 「今起きていることは、かなり深刻な気がして。何年もかかっても収拾がつかな
 いことが起きている。だから、賛否別れるだろうけど変わらざるを得ないし、変
 わったほうがいいと思う。ポジティブに。自立的なカタチで持って。パニックに
 なってヒステリーを起こすんじゃなくて。一人一人が覚醒し、成熟の方向に向か
 って一歩踏み出す時なんじゃないかと、個人的にはそう思ってます」
その中でポップカルチャーが果たす役割は?目を覚まさせるものなのか、癒しを与
えるものなのか、どっちでしょう?
 「どっちもあると思う。ポップカルチャーって常に功罪を孕んでて、いいモノと
 悪いモノとを磨き続けるものなんです。ポピュラーミュージックは一人の息吹で
 すから、いい事ばかりじゃないんです。賢者の格言じゃないから。なかなか今の
 状況を見ててポジティブな気持ちになれないけれど、グッと踏ん張って、いい方
 に舵を切れる様に、あーでもないこーでもないと考え悩む時期なのかな、と個人
 的には思っています」
 
 
いつもは来てくれるソングライターに、どちらかと言うとプラクティカルなソング
ライティング、どう詞を書くんですか、どうやって曲を書くんですかという質問を
多くしてきたんですけれど、今日は、なにか旅人さんを前にして、もっと深いこと
を聞いてみたい気持ちになりました。なぜ僕たちは、音楽を紡ぐのか。なぜ僕たち
は、言葉と格闘するのか。それは何なんだ?っていうことを、彼と会話してみたく
なりました。
僕と彼とは、世代は違いますけれども、表現者としては同じ地平に立っているので
はないかなと、そんなことを思って、とても僕は感激しました。
旅人さんでした。
(場内拍手)




七尾旅人というアーティスト、私は不勉強で残念ながら名前すら知らない方
でした。しかしながら一人のアーティストとして素晴らしいと感じました。
「圏内の歌」という曲がNHKという「公共の電波」で流れたこと、これは凄
いことなんじゃないかなあ。

「ザ・ソングライターズ」3rdシーズン、これで完結ですが今回もまたまた
どのゲスト回も素晴らしいプログラムでした。
おかげでメモ書き程度の記事にするつもりが、結局それなりに書き起こして
しまいまして(笑)・・・

この講義に参加出来た学生さんは、どの回も素晴らしい体験になったことで
しょう。いつか、このソングライターズの講義に出席した経験を持つアーテ
ィストやクリエイターが、現れることがあれば面白いですね。

さ、来年は第4シーズン、あるでしょうか?



「佐野元春のザ・ソングライターズ 3rdシーズン」
NHK教育 毎週土曜 夜11:00-11:30 (再放送は翌週の土曜 昼11:00-11:30)



← 3rdシーズン Vol.9・Vol.10 ゲスト:キリンジ へ

シーズン4 Vol.1・Vol.2 ゲスト 中村一義 へ



テーマ:番組紹介 - ジャンル:テレビ・ラジオ

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