'11,6,5 放送 TBS系列
TBS開局60周年記念番組「Jin-仁-」 第8話「歴史に逆う命の誕生…」 感想
まずは、あらすじを。
・龍馬と後藤、薩長に内緒で大政奉還の策を進めていた
・船中で書きものをしている龍馬。条文を「九、…」と書き続ける
・歴史では大政奉還は今年中に起こる。龍馬暗殺は確か寒いころにあった記憶が…
・仁、頭痛を堪え龍馬への文、直接暗殺に触れられない。「寒き京 ご注意を」
・仁の望む未来。野風が子を産みミキが生まれ変わること、龍馬の暗殺を防ぐこと
・歴史は変えられないと決まった訳ではない。望む未来はこの手で創り出そう…
・そして、野風が出産を迎え、仁友堂へ来た。出迎える仁友堂の面々
・仁に奥医師の話がきた。奥医師になっている三隅、仁を意味ありげに見送る
・野風の子は逆子。福田が灸を試み、咲が整体マッサージを行い、励ます
・京で動く龍馬を薩摩が詰問。大政奉還は薩摩には好ましくないのだ
・西郷を説得する龍馬。今の日本は茶碗の中の喧嘩。外国の植民地になってしまう
・西郷「人は理だけで生きるわけではごわはん!」龍馬、仁の言葉を持ち出す
・仁は薩長の戦をどっちがどっちかわからんと言った。その言葉の意味を考えろ!
・龍馬の言葉は西郷には届かない。あえなく追い出される龍馬
・京の近江屋。中岡が大政奉還など聞いてないと、龍馬にキレている
・そこに二条城にて大政奉還の評定が始まった、との知らせ。きたぁ!龍馬叫ぶ
・野風に陣痛が始まった。しかし、赤子は片手が先に出て来てしまった
・仁、どちらかを確実に救うなら母体だと、赤子は諦める決意で麻酔の準備を
・しかし野風に悟られる。「腹を切っておくんないし!子を取り出して!」
・帝王切開には麻酔が必要だが、仁友堂の麻酔は赤子には強すぎて危険だ
・野風、麻酔は必要ない、あちきの夢を奪わないでと懇願。それを見て咲、決意
・帝王切開を致しましょう。女子は子の為なら、どんな痛みにも耐えられまする!
・女性二人の熱意に根負けした仁、麻酔なしの帝王切開をすることを決心する
・手術が始まった。麻酔を使わずに開腹の激痛にのたうつ野風
・京の龍馬、写真の仁に語りかける。この国は生まれ変われるがかい?
・遂に赤子を取り出すも泣かない。咲、逆さにして尻を何度も叩く。泣きなさい!
・赤子が泣き出した。しかし野風は出血が激しく、意識不明に
・仁をあの激しい頭痛が襲う。必死に心臓マッサージをして野風に呼びかける仁
・子供を抱くんじゃなかったんですか!死なないって言ったじゃないですか!
・野風に意識が戻った。佐分利たちに処置の指示をする仁
・龍馬のもとに知らせが。大政奉還、成る。龍馬絶叫「夜が明けたぜよー!」
・赤子に優しく語りかける咲。疲れて泥のように眠る仁。京では龍馬も。そこに…
・龍馬の喉元に剣先をあてる東。だが剣を収める。「もういいですよね、兄上…」
・子には安寿と命名。野風たちの会話に出て来た「誕生日」の言葉に仁が思い出す
・ミキは龍馬が死んだ日は誕生日だった、と言っていたんだ!
・仁、勝のもとへ駆けつける。そこで大政奉還が成ったことを知る
・勝に龍馬の書いた「船中九策」を見せられる仁、九つ目は保険についてだった
・知恵を付けたのは先生かい?。勝が問う。歴史には無い九つ目に絶句する仁
・居るはずの無い俺の足跡が、歴史に刻まれていく。坂本龍馬の手で…
・気を取り直し、龍馬の誕生日を勝に尋ねる。11月15日。あと、ひと月だ…
・してやられた、と憮然たる薩摩勢。江戸では恭太郎が上司に叱責されていた
・仁、京に向うことを決意。咲に「龍馬さんが、あん…」頭痛で言えない…
あかん、面白すぎる(笑)。
上記あらすじも、もう少しコンパクトにしたいのですが、ついつい書き込ん
でしまいます。どのシーンも細かく書きたくなってしまう。
この第8話、素晴らしい出来でした。仁パートと龍馬パートを細かく何層に
も重ね合わせて同時進行する緊張したストーリーを盛り上げています。
野風の麻酔なしの手術シーンはもう正視出来ませんでしたよ(笑)。見ていて
太もものチカラが抜けていきそうで(笑)。そしてその後、赤子の尻たたきに
野風の心臓マッサージでは肩に力が入り、息も出来ずに見入りました(笑)。
果たして赤子と野風は生命の息吹を取り戻す。
龍馬は絶叫。「夜が明けたぜよー!!」
いいねえ。いいねえ。
西郷と龍馬の会談も、勝と仁のやり取りもまたこれがいいんだ。
咲の赤ん坊に語りかける内容もホッコリ、シミジミ。
いいシーンがテンコ盛り。
盛り上がった、楽しかった。
まあ、いかに女性は痛みに強いとはいえ、麻酔なしの開腹は実際には無理で
しょうね。気絶、下手すりゃショック死では?その辺りはドラマ的な虚構で
流せても、手術中に髪の毛振り乱してマスクをもぎ取る仁センセには、それ
はマズいでしょ、とツッコム人も多かったかも。
この辺は難しいところですね。ドラマ的演出としては、マスクを取って叫び、
髪を振り乱して人間・南方仁が叫ぶ方が盛り上がる。でも手術中の衛生面を
考えるとありえないことですから、これで醒めてしまう視聴者もいるかも知
れない。
いいシーンで、盛り上げるためにウソを入れるか、入れないか。
そのさじ加減。ドラマ・映画の創り手にとって悩みどころだと思います。
今回は、私的にはよかったと思います。見ていて「ん?」とは思いましたが、
それで白ける気分にはならなかったし、仁の必死な思いが伝わりました。
さて、今回は何といっても「船中九策」が出色のアイデア。恐れ入りました。
勿論、史実では「船中八策」ですが、仁に聞いた国民保険の仕組みを龍馬が
取り入れた。タイムスリップの歴史物として、こういうのは大歓迎。
どうやら原作マンガにはないオリジナル展開のようです。
スポンサーに日本生命がいるから保険の話を、なんてのは邪推ですね(笑)。
国民みんなが安心して医療を受けられる。医者の仁にとってこれは嬉しいこ
とに違いありません。絶句してへたり込む仁が印象的でした。
龍馬の功績の一つとして有名な「船中八策」。
文字通り船の中にて後藤象二郎に対して新政府の基本構想を話したものを、
龍馬の仲間の海援隊士が書き留めたもの、と言われていますが、原本も写し
も存在しておらず、成立過程について伝わる話も資料もありません。ですか
らどこまで龍馬のオリジナル性があるものなのか、別人の構想を語っただけ
なのか、詳細は不明です。
劇中でも勝海舟が「八つ目までは、おいらや一翁(大久保一翁)さんが教えた
ものをそっくり頂戴してやがる」と言ってました。
船中八策とは、
一、天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出づべき事。
一、上下議政局を設け、議員を置きて万機を参賛せしめ、万機宜しく公議に
決すべき事。
一、有材の公卿・諸侯及(および)天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、
宜しく従来有名無実の官を除くべき事。
一、外国の交際広く公議を採り、新(あらた)に至当の規約を立つべき事。
一、古来の律令を折衷し、新に無窮の大典を撰定すべき事。
一、海軍宜しく拡張すべき事。
一、御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事。
一、金銀物貨宜しく外国と平均の法を設くべき事。
これらは一言で言うと、
大政奉還・二院制の議会政治・身分を問わない人材登用・外交の刷新・大典
(憲法)の制定・国海軍の増強・親兵(近衛兵)の設置・金銀交換レートの整備、
となります。この八つの新政府構想は、当時としては画期的なものでした。
このプランを後藤象二郎が土佐の大ボス山内容堂に伝え、船中八策に基づい
て作成された大政奉還建白書が土佐藩から幕府へ提出されます。
考え出したのが龍馬だったのか、が重要ではなく、プランをプランだけに終
わらせずに、実現するために奔走し、考えを伝え、人を動かし、本当に実現
させてしまった。そこが龍馬のすごいところなんですね。
「呪いシート」
「ノイロシートです」
というベタなツッコミシーンが序盤にありましたが(笑)、このノイロシート
とは何じゃいな?と調べました。
「脱脂綿を特殊加工した神経組織の保護、液の吸収、又は止血のために脳手
術中に用いるコットンのパッド」だそうです。
今回紹介されたこのノイロシートが、おそらく龍馬暗殺騒動にて活躍するの
でしょう。
あと、気になったのが東。
以前から龍馬の護衛とはいえ、何か怪しげな態度の人物でした。今回、疲れ
てグッスリ寝ている龍馬に刀を抜き、剣先を喉元に当てます。
しかし、殺すことは出来なかった。「もう、いいですよね、兄上・・・」
東の兄が劇中に登場した記憶はありません。しかし兄に関して、東は龍馬に
恨みを持っている印象です。
おそらくですが、第1期にて久坂が龍馬に追っ手を差し向け、龍馬に返り討
ちにあっていました。久坂の配下ですからあれは長州藩士でしょうし、あそ
こで死んだ藩士の一人が東の兄だったのではないでしょうか。
次回あたり、説明がなされるかも知れません。
いよいよ龍馬の暗殺が目前に。前回の記事で、龍馬の暗殺は誕生日だったこ
とを覚えていたら・・・と書きましたが、思い出せないミキの発言が日付で
はなく、誕生日に死んだ、ということだったんですね。ようやく仁も思い出
しました。
もう時間はありません。果たして暗殺を防ぐことが出来るのか?
そして暗殺犯は誰か?今までの展開では、東、薩摩藩、恭太郎などが怪しい
ですね。中岡だったら爆笑ものですが。
【 JIN-仁- 第2期(完結編)第8話 キャスト 】
南方仁:大沢たかお…脳外科医。幕末の江戸にタイムスリップする。
橘咲:綾瀬はるか…恭太郎の妹。仁のもとで看護婦として医療を手伝う。
坂本龍馬:内野聖陽…土佐の脱藩浪人。仁の親友となる。
友永未来:中谷美紀(特別出演)…仁の婚約者。仁の手術で昏睡状態になる
野風:中谷美紀(二役・特別出演)…元・吉原の花魁。ルロンと結婚。
橘恭太郎:小出恵介…仁に命を救われた侍。勝の元で働いている。
橘栄:麻生祐未…咲と恭太郎の母。武家の誇りを重んじる厳格な女性。
佐分利祐輔;桐谷健太…華岡流の麻酔術を学んだ若き医師。仁の片腕となる。
山田純庵:田口浩正…西洋医学所の医師。仁友堂にてペニシリン製造を担当。
福田玄孝:佐藤二朗…もと医学館の医師。胃を仁が手術した縁で仁友堂の一員に。
八木:斉木テツ…仁友堂の一員。
横松:中江大樹…仁友堂の一員。
松本良順:奥田達士…西洋医学所頭取助。亡き緒方洪庵の遺志を継ぎ、仁に協力。
勝海舟:小日向文世…龍馬・恭太郎の師。仁の医術に深く興味を抱く。
三隅俊斉:深水三章…野風が身請けされる予定だった某家門の藩医。今は奥医師。
板倉勝静:河野洋一郎…幕府の老中首座。
恭太郎の上役:中原丈雄
田中久重:浅野和之…からくり儀右衛門と呼ばれた発明家。東芝の創業者。
後藤象二郎:宮川一朗太…土佐藩士。大政奉還を山内容堂に進言、実現に寄与した
西郷吉之助:藤本隆宏…薩摩藩士。禁門の変の指揮を執った際、仁の診察を受ける。
中岡慎太郎:市川亀治郎…土佐藩出身の志士。龍馬と共に薩長の和解に奔走する。
勝海舟:小日向文世…龍馬・恭太郎の師。仁の医術に深く興味を抱く。
ルロン:ジャン・ルイ・バージュ…野風と結婚したフランス人。
【スタッフ】
原作:村上もとか『JIN-仁-』(集英社「スーパージャンプ」)
プロデュース:石丸彰彦、中井芳彦
脚本:森下佳子
演出:平川雄一朗(第1,2,3,7,8話担当)
山室大輔(第6話担当)
那須田淳(第4,5話担当)
音楽:高見優、長岡成貴
主題歌:平井堅 「いとしき日々よ」
時代考証:山田順子
制作著作:TBS
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