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tateの観た映像、読んだ本、思った事、、、

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岩井俊二のMOVIEラボ #1

15,1,8 放映 NHK Eテレ

『岩井俊二のMOVIEラボ』#1「SF編」感想

こんな番組が始まるとは全く知らず、前日にHDDレコーダーの番組表で偶然
発見。予約録画することが出来ました。


 「この番組は映画監督・岩井俊二を主宰に迎え、古今東西の映画の魅力を
  様々な角度からひも解く6回シリーズです」

  
ということで、出演は
【主宰】岩井俊二
【レギュラー講師】樋口尚文(映画評論家・映画監督)
         岸野雄一(作曲家・東京藝術大学講師)
【ゲスト】庵野秀明
     樋口真嗣

の面々。岩井俊二にエヴァの庵野、平成ガメラの樋口の三人が語り合う……
と言うだけで、もう期待大。実際、楽しく視聴出来ましたが少々物足りない
思いもありました。

もう少し演出に関わることや、テクニカルな面の話を突っ込んで話して欲し
かったけど、意外と普通な話だったかな、という感じ。この3人でSFを語る
なら、もっとマニアック指向を期待したのですが。司会が岡田斗司夫とかな
ら、間違いなくそーなったでしょうけど(笑)。

主宰・岩井俊二ということで司会進行を同氏が務めていますが、やはり仕切
りはもっとしゃべりが出来る人の方ががいいですね。そう思うと佐野元春は
『ソングライターズ』で上手く仕切っていたんだなあ、と改めて感心。

まあ、映画監督なんて「しゃべりが上手けりゃ映像で表現なんてしてねーよ」
って方が殆どでしょうし(例外な人もいてはりますが(笑))、仕切りのマズさ
はおいといて、こういうプロフェッショナルな方々が直に会話を交わす、と
いうことが貴重なのかも。


後半、聴講生(映像のプロを目指す若者たち)が作ったスマホを使って撮影
した1分の映画を3人が批評するコーナーで印象的だったのは、庵野がある
作品の監督に対し、
「編集のテンポが一定過ぎるので、もうちょっとメリハリ付けた方が良い」
と言いながら、カットの長さの緩急について話しているうちに
「同じで良いのかな、と今ちょっと思いました。僕が間違ってたのかも」
と語りかけたところ。彼の誠実さを感じました。

こういうのって、多分正解は無いんでしょうね。最初、直感で感じたこと。
その後、いろいろ考えて思ったこと、そのどちらが正しいのか。
プロの監督でも、おそらくそういう状況はあるんだと思います。最初の直感
を信じるか。いろいろ熟考した結果を採用するか。制作の現場って、そんな
選択の繰り返しなのでは。


来週の第2回は「特撮編」。えらくまたSFと二アリーなジャンルですが、引
き続いて同じゲスト2人がその違いを含めて色々語ってくれそうです。
これで3回目が「ホラー」なら、その偏りぶりが面白いんだけど(笑)。
個人的には「西部劇」というテーマも大歓迎ですが、やらねえだろーなあ。
「美少女」のテーマでゲストは大林宣彦監督とかね。いろいろ妄想と期待が
広がります。「ミュージカル」「戦争」「サスペンス」そこらもあるかな?

なお、再放送が次週の水曜深夜にありますので、見逃した方はそちらを。




『岩井俊二のMOVIEラボ』
2015年1月8日(木)からスタート(Eテレ・全6回) 
放送日  毎週木曜 午後11時~11時45分
再放送  翌週木曜 午前0時~0時40分(水曜の深夜)

公式サイト http://www4.nhk.or.jp/movielab/



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テーマ:TV番組 - ジャンル:テレビ・ラジオ

人形劇 シャーロックホームズ 1話・2話

14,3,25-26 放映 NHK総合

人形劇『シャーロックホームズ』
 第1話/第2話 「最初の冒険」前・後編 感想


2009年から翌年にかけて、NHKで放映された連続人形活劇 『新・三銃士』
の主要スタッフが再集結して、新たな人形劇が始まりました。題材は、誰も
が知ってるあの名探偵、シャーロック・ホームズ!

脚本の三谷幸喜はホームズの熱心なファンであり、それ故、脚本を依頼され
た際は「原作が好きすぎる」と渋ったそうですが、
「面白くても、全世界のシャーロッキアンに納得してもらえないものは作り
たくなかった。シャーロッキアンほど楽しんでもらえるし、逆に言うなら、
これを観て楽しめない人はシャーロッキアンではない」
(シャーロッキアン=熱狂的なホームズファンのこと)
と言い切るほど自信ある脚本となったようです。

これまで数多くの映像化作品が生み出されたシャーロック・ホームズ物語。
正統派な作品は勿論、様々なアレンジ・改変も成されて来ました。
過去に「ヤング・シャーロックホームズ」なんて若き日のホームズを描いた
映画がありましたね。他にも現代のロンドンを舞台にしたり、動物キャラの
アニメとかも。

今回の三谷脚本では、原作のエッセンスを取り入れ、15歳のホームズと相棒
となるワトソンが学園を舞台に活躍する物語となりました。

学園ものということで殺人は出てこないとのこと。しかし、人間の悪い部分、
負の部分はきちんと描くそうです。

[参考サイト]
ワトソン君、事件だ 三谷版シャーロック 学園舞台に:TOKYO Web
三谷幸喜版ホームズ…殺人のない学園人形劇に:YOMIURI ONLINE




予定では全20話。今回の3月25〜27日の先行放映で第1話から第3話、さら
に8月に別の3話を放映。10月から定時放送として改めて1話から放映される
(Eテレ)予定だそうです。

で、1,2話を観ました。タイトルは「最初の冒険」〜「緋色の研究」より〜
となっており、「ホームズ」シリーズの最初の作品が元ネタとなっています。
更に、「六つのナポレオン胸像」も元ネタとして用いられていますね。
原作では毒殺事件だったのが、本作ではゆで卵の食中毒へと替わり、ナポレ
オンの胸像連続破壊が、生徒の美術制作の石膏像が連続破壊される事件へと
変更されているのが実にユニーク。

ゲスト声優で妻夫木聡が出演。当初、どの声か分からなかった…(笑)。多分、
ホープ役ですね。3話では宮沢りえ、中村梅雀がゲスト出演するそうです。


原作は一通り読んでいるのですが、だいぶ記憶も怪しくなっていますので、
改めて調べてみると…。
いろいろ細かく原作からの引用がなされているようです。登場人物をとって
みても、脇役まで原作に登場するキャラクターから取られています。
熱心なホームズファンならニヤリ、と出来るところでしょう。
この1,2話に登場した人物を以下に記してみます。
(犯人など、ネタバレ記載しております。原作が古典でもあり、記載致しま
したが、原作未読の方はご注意下さい!)

スタンフォード
  …本作 最初にワトソンに話しかけて来て、ホームズのいるベイカー寮
      の221B号室にまで案内した生徒
  …原作 ワトソンがかつて勤務していた病院にて助手であった男。偶然
      再会したワトソンが下宿を探しているとのことで、彼にホーム
      ズを紹介した。(緋色の研究)

バーニコット
  …本作 いい出来だと自慢の石膏像を壊され、落ち込んでいる生徒。
  …原作 開業医の博士。ナポレオンの胸像が自宅と医院とで破壊される。
      (六つのナポレオン)

アガサ
  …本作 母からもらった大事な指輪をなくし、探して欲しいとホームズ
      に頼みにくる女生徒。
  …原作 捜査の為にホームズが誘惑して情報を得たメイド(犯人は二人)

ベッポ
  …本作 石膏像を割った犯人としてワトソンを訴えた生徒。実は彼が犯人。
  …原作 彫刻職人。ナポレオン胸像破壊の犯人。(六つのナポレオン)
  
ロイロット
  …本作 生活指導の先生。
  …原作 依頼人の義父である名家の博士。犯人。(まだらの紐)

レストレード
  …本作 生活委員の生徒。ホームズに腹痛事件を知らせる。
  …原作 ロンドン警視庁の警部。ホームズに事件捜査を依頼する。

ジェファーソン・ホープ
  …本作 アーチャー寮の生徒。時計を取り戻す為、腐った卵による賭け
      をドレッパーとスタンガスンに申し込む。
  …原作 婚約者とその父を殺害したドレッパーとスタンガスンを追う男。
      毒による決闘を二人に申し込む。(緋色の研究)

ドレッパー
  …本作 腹痛を起こした生徒。腐った卵による賭けをして敗れ食中毒に。
  …原作 殺人事件の被害者。ホープに毒による決闘を挑まれ、敗れた。
      (緋色の研究)

スタンガスン
  …本作 ドレッパーの悪友。同じく腐った卵の賭けで腹痛を起こす。
  …原作 ドレッパーの秘書。殺人事件の被害者。(緋色の研究)

ビートン
  …本作 ホームズたちが学ぶ学校の名前。
  …原作 『緋色の研究』が初めて発表されたのは「ビートンのクリスマ
      ス年鑑」という雑誌。


学校の名前まで、原作に関連しているんですね。
あと、個人的にツボッたのはホームズがピロピロ笛(吹き戻し)をピュー、
と吹いていたところ。あれ、原作ホームズのトレードマークであるパイプの
代わりですね。15歳でパイプって訳にはいかんでしょうから(笑)。


脚本はさすが、よく出来ているし、人形操演はお見事、と言うしかない出来。
美術も上手いし、声優さんたちも好演。

人形劇は子供向け、なんて思っていたら勿体ないです。ホームズシリーズを
昔読んだことのある方も、読んだことのない方も、充分に楽しめる作品だと
思います。

どうやらNHKは本作品を世界戦略コンテンツと捉えている様です。
世界の方々が日本発・人形劇のホームズをどう見るのか?
その辺りも興味深いですね。




公式サイト
http://www.nhk.or.jp/sh15/

【 人形劇『シャーロックホームズ』1話・2話 主なキャスト(声の出演) 】

シャーロック・ホームズ(声:山寺宏一)
 …ロンドン郊外にある全寮制の名門校・ビートン校の生徒。寮の部屋は221B。
  卓越した観察眼と洞察力を持つ15歳。ナイーブで学校では変わり者・問題児
  として知られている。持ち前の推理力で校内の事件を次々と解決していく。
ジョン・H・ワトソン(声:高木渉)
 …ビートン校への転入生。ベイカー寮でホームズと同室になる。心優しく献身的
 な性格の15歳。ホームズと出会ったことから、彼が解決した事件の記事を学校新
 聞に執筆することになる。
ハドソン夫人(声:堀内敬子)
 …ベイカー寮の寮母さん。気のいい世話好きな女性。お手製クッキーを生徒たち
  にいつも配っている。
モリアーティ教頭(声:江原正士(たぶん))…学園の教頭先生。
ロイロット先生(声:浅野和之(たぶん))…生活指導担当の教師。
レストレード…生徒の一人。生活委員。


【スタッフ】
脚本:三谷幸喜
パペットデザイン及び人形美術監修:井上文太
人形美術・演出:スタジオ・ノーヴァ
音楽:平松加奈
主題歌:ナノ 「Scarlet Story」
製作統括:紀平延久
================================

また、本作品を集英社みらい文庫が児童向けにノベライズ化して発売すると
のこと。
 『少年シャーロック ホームズ 15歳の名探偵!!』
  時海結以・著 千葉・絵
  4月4日(金)発売



【関連過去記事】
連続人形活劇 新・三銃士 第1話


HolmesNHK01a.jpg





テーマ:NHK - ジャンル:テレビ・ラジオ

ハリウッド白熱教室 第1回

2013,6,7放映 NHK Eテレ

「ハリウッド白熱教室」 第1回「脚本 人生をストーリーにする」感想

マイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」以来、大学の講義をその
まま体験出来るような番組がいくつか放映されましたが、今月から、必見の
プログラムが始まりました。

「ハリウッド白熱教室」。教壇に立つのは南カリフォルニア大学・映画芸術
学部のドリュー・キャスパー教授。

南カリフォルニア大学(USC)の映画芸術学部は全米一のレベルと実績を
誇り、監督、プロデューサー、脚本家など、ハリウッドで活躍する卒業生の
数は1万人以上。これまでアカデミー賞を手にした卒業生は、50人を越える。

そんなUSCで入学した学生たちが、一から基礎を学ぶのがキャスパー教授
の「映画論入門」。実際には15回の講義があるそうですが、今回は番組用に
全5回の特別講義。名作映画のシーンを題材に、そこに込められた製作者の
狙いやテクニックを読み解いていきます。


キャスパー教授の授業は人気講義だけあって、とてもユニークで興味深いも
のでした。大きな身振り手振りで派手なパフォーマンス。「君は素晴らしい」
「絶好調だねぇ」「天才だ!」と学生をノセていく授業には引き込まれてい
きます。

一階目の授業は「脚本」がテーマ。
脚本と脚色の違いは? 主題とテーマの違い? 脚本には何が必要なのか? 
人生のありふれた出来事、偶然の出来事に潜んでいることをストーリーにし
て理解する。
冒頭→中間→結末と直線構造で語るのと、エピソードごとで語るのかは全く
違う。
脚本における時間設定の3つの要素…時代設定、季節、期間。
物語の視点…神の視点、一人称、三人称、複数の視点。誰の視点で語られて
いるのかを注目する。
モチーフとは…反復される言葉。
引喩とは…別の映画などを引用することで間接的に意味を伝えたり明確にす
ること。
メモ書きでちょっと分かりにくいですが、そういったことを「いつも2人で」
「サンセット大通り」「ショーシャンクの空に」の3本の映画を実際に観た
上で解説していきました。


映画・ドラマが好きな人には是非、お勧めしたい番組です。

次回、2回目の授業は「ビジュアルデザイン」。照明の当て方や衣装・小道
具の配色など「光」と「色」に焦点を当てていきます。




「ハリウッド白熱教室」
毎週金曜日 Eテレ 午後11時〜11時54分

第1回 脚本 人生をストーリーにする
第2回 ビジュアルデザイン 映画は見た目がすべて 2013年6月14日
第3回 撮影 すべてのショットには意味がある 2013年6月21日 
第4回 編集 時間と空間の魔術 2013年6月28日 
第5回 音響効果 世界は音でできている 2013年7月5日 



テーマ:NHK教育 - ジャンル:テレビ・ラジオ

NHKスペシャル 沢木耕太郎 推理ドキュメント運命の一枚

'13,2,3 放映 NHK総合

NHKスペシャル
「沢木耕太郎 推理ドキュメント運命の一枚~"戦場"写真 最大の謎に挑む~」

衝撃的でした。
これぞNHKスペシャル、といった作品。
今年に入ってのNHKスペシャルはスマッシュヒット連発ですな。
ダイオウイカ、ボクサー「マニー・パッキャオ」の密着、そしてキャパ。


戦場カメラマンといえばロバート・キャパ。ご存知の方は多いと思います。
私も大好きな人物で、「ちょっとピンぼけ」は10代の頃に夢中になって読ん
だものです。

このブログでも以前、「キャパの有名な写真「崩れ落ちる兵士」はやらせ?
=スペイン紙報道
」という記事を2009年7月にUPしたことがあります。
あまりに完璧なので、「キャパは撃たれることを予期して構えていた」など
とまで言われたこの写真にヤラセ疑惑があることを報道していました。

今回、作家の沢木耕太郎がこの疑惑を解明していくわけですが、尋常では無
い面白さ。勿論、ここで導き出された答えもあくまでも仮説の一つではある
のですが、感想としては、もうこれが真実なんだろうと信じざるを得ません。

衝撃の内容を中盤まで、ザッとですが書き起こしてご案内。




capa001_c.jpg


ロバート・キャパ。戦場カメラマンとして今なお伝説的な存在である。

「崩れ落ちる兵士」。戦場での死の瞬間を捉えたこの写真。
あまりに完璧すぎて、さまざまな憶測を呼んでいる。
撮影時、キャパは無名の22歳。初めての戦争取材だった。

その謎に光を当てる43枚の写真が近年公開された。「崩れ落ちる兵士」と
前後して撮影された写真だ。これらから最新技術による検証を重ね、一つの
答えを出すに至る。

兵士は死んでいない。撃たれてもいない。


まず最初に明らかになったのは撮影された場所。
南スペインのアンダルシア、エスぺホの丘。

43枚の写真から背景の山の稜線などを比較検討し、衛星データ、古地図など
も用いてCGにて当時の丘を再現する。
撮影場所や角度などの詳細が掴めてくる。

地元の老人の証言にて、エスぺホの丘が戦場になったことは事実だ。

43枚の写真では、男たちが丘の上で手を上げていたり、走っていたり、銃を
構えたり、塹壕を飛び越えたりしている。そのなかで突然、白シャツの民兵
が撃たれているあの写真。

戦争中を撮った写真とは思えないショットが多いのだ。

軍に勤める内線の歴史に詳しい専門家に話を聞いた。

当時使われていたスパニッシュモーゼルという古いライフル銃を実際に見せ
ながら語る専門家。
ボルトが実弾を撃てる状態になっていない写真が多い。すぐに発砲出来ない
状態の銃を構えている。
戦闘状態とは思えない。

さらに決定的な事実。

「崩れ落ちる兵士」の写真は1936,9,23に初掲載された。その日以前のエス
ペホでは戦闘は無かった。
キャパが撮ったのは演習中の写真だったのだ。

しかし、この写真は「崩れ落ちる兵士」とタイトルが付けられ、写真雑誌の
「ライフ」に大々的に掲載された。以来、キャパの予想を超えた大きな力を
持つことになる。

ファシズムと闘う英雄的な兵士の死に、多くの人が心を動かされた。
キャパはたった一枚の写真で時代の寵児となった。
しかし、キャパはこの写真について、多くを語ろうとはしなかった。
語れなかったのだ。


キャパは本名でない。本名エンドレ・フリードマン。ハンガリー系ユダヤ人。
キャパがドイツでカメラマンになろうとした19歳の時、ドイツではヒトラー
が政権を握った。
キャパは彼なりの方法でファシズムと闘おうとしていた。カメラ一つで。

キャパは、自分が正義と信じる共和国の為にも口をつぐむしかなかったのか
も知れない。

本当の戦場で撮った訳でもない一枚の写真で有名になった男が、誰にも言え
ない秘密を抱え重荷を背負った。
その結論を得て、キャパを巡る旅は終わる筈だった。


しかし、そこで一枚の写真から、別の可能性があることに気付く。
兵士が撃たれているか否かを越える衝撃的な問題をはらんでいた。

丘を駆け下りる一人の兵士を捉えた写真。だがその兵士の奥に隠れたもう一
人の兵士。それはあの「崩れ落ちる兵士」の白シャツの男だ。上下に激しく
ぶれている。

その写真の直前とされるショットでは、兵士たちが斜面を駆け下りている。

斜面を駆け下りる兵士たちを撮っているとき、一人が何らかの理由で体勢を
崩した。その瞬間が撮られたものではないか。

ここで一つの仮説が立てられる。

その写真の白シャツの男と、「崩れ落ちる兵士」の白シャツの男は同一人物
であろう。更に、この2枚の写真には地面から伸びた特徴的な草の茎が共に
移っていることから、同じ場所で撮られたことが推測出来る。

「崩れ落ちる兵士」の一瞬前に撮られた写真。

だが、続けて撮られたはずの写真の背景にある山の稜線が違っている。

どういうことなのか。

CGなどで綿密に調査すると、この2枚の写真から新事実が浮かび上がる。

その写真では、被写体までの距離はおよそ5m。
「崩れ落ちる兵士」からもカメラマンの位置を割り出すと、この2枚の写真
の撮影場所は1.2m離れていることが判明する。
手前を駆け下りる兵士が通り過ぎないと「崩れ落ちる兵士」は撮影出来ない。
手前にいる2人が駆け下りてカメラに写らなくなるまでの時間を計算すると
0.86秒。

一人のカメラマンが0.86秒の間に1.2m移動してもう一枚の写真を撮る。

当時のカメラではまず不可能だ。

2枚のうちの1枚は、キャパ以外の誰かが撮った。

「崩れ落ちる兵士」をキャパが撮った可能性は50%に過ぎないのだ。


当時、キャパと行動を共にしたカメラマン。それは女性だった。
ゲルダ・タロー。女性最初の戦場カメラマンでキャパの恋人でもあった。

彼女もユダヤ人であり、逃れて来たパリで二人は出会った。しかし、キャパ
は未だ安定した仕事がなかった。ゲルダは現状を脱するアイデアを思いつく。
恋人に「ロバート・キャパ」というアメリカ人カメラマンを演じさせ、より
よい仕事を得させようとさせた。移民の二人にはその方が都合が良かった。
2人は2台のカメラを手にスペインの戦場に向かったのだ。

「崩れ落ちる兵士」から10ヶ月後、ゲルダは単独でスペイン戦争最大の激戦
地にいた。そこで彼女は戦車に轢かれ、死亡する。26歳だった。

「崩れ落ちる兵士」がライフに掲載され、キャパが世界的に有名になる直前
のことだった。

「崩れ落ちる兵士」を撮ったのはキャパなのか、ゲルダなのか。


ゲルダが持っていたカメラはローライフレックス、キャパはライカ。
43枚中7枚は正方形のネガが残っており、ローライで撮られた、つまりゲル
ダが撮ったと判明している。
43枚中21枚はライカで撮られた。ネガが残っており、2:3の横長サイズだ
からだ。「崩れ落ちる兵士」はネガが失われているのでどちらか分からない。

オリジナルプリントに最も近いとされている写真から分析する。
地形データなどからCGで計算し、ローライのフレームを合わせると、充分に
撮影可能と分かる。

ライカではどうか。
上部、全体の5%がフレームに治まらない。ライカでは「崩れ落ちる兵士」
は撮れないのだ。


撮ったのはキャパではない。ゲルダが撮ったもので、しかもその写真が有名
になる直前、彼女はこの世を去るのだ。

そんな写真が伝説の一枚となった時、22歳の若者はどう生きることが出来た
のだろう。どう生きねばならなかったのか。
・・・・・・・





あえて、書き起こしはここまでにします。

これで終わったら、ショッキングなスクープネタの発表に留まってしまいま
す。キャパの名誉は地に落ちて、ニセモノ扱いになってしまうでしょう。

されど、さすが沢木耕太郎。取材対象を冷静に観察しながらも、情熱と愛情、
ダンディズムが溢れる沢木節が炸裂する以降の展開は感動もの。

勿論、キャパが果たしてどういう心情だったのか、誰にも分かりません。
しかし、キャパの伝記の訳者でもある沢木耕太郎が、誰よりもキャパを見つ
め、理解しようとした末に導き出された主観的な答えは説得力があり、優し
さと祈りを感じ、カメラマンとしての矜持を抱いた一人の男がとった行動に
思いを馳せることが出来ます。


番組は2月6日深夜にも再放送される予定。見逃した方は是非どうぞ。
また、このルポルタージュは『文藝春秋』2013年1月号に掲載されていた
そうで、2月16日に『キャパの十字架』として書籍化されるとのこと。
海外でも話題になりそうですけど、英訳したりしてるのかな?




テーマ:ドキュメンタリー - ジャンル:テレビ・ラジオ

佐野元春のザ・ソングライターズ シーズン4 Vol.11・Vol.12

'12/12/14,21 放映 NHK Eテレ

佐野元春のザ・ソングライターズ  第4シーズン(Vol.11・Vol.12)

「ホピュラー音楽のソングライターこそ、現代の詩人」
「ポップソングは時代の表現であり、時代を超えたポエトリー」

そんな佐野元春の言葉で始まる「ザ・ソングライターズ」。
4thシーズンのラストはゲストなし。
佐野元春自身がソングライティングを語ります。

では今回も抜粋で書き起こし。
途中、過去に登場したゲストたちの発言も名場面的に引用されていましたが、
ここでは全て省略、佐野の発言のみを取り上げています。
いつもの通り、佐野の発言そのままは文字色を変え、当方にて発言をまとめ
たものは変えていません。



ソングライターたちにとって、一番頭を悩ませることは何か? それは、言葉、
詩、リリックですね。これまでゲストに来てくれたソングライターの皆さんに聞
いてみるとやはり、メロディーよりも詩を書くことの方が難しい、と言っていま
した。これは個人的に僕が好きな言葉です。

  詩人に詩を書こうとする衝動が生まれるのは、彼の
    想像力が聖なるものと遭遇することからである。
                    W・H・オーデン

「聖なるものと遭遇する」。そう書いてありますけれども、この言葉の意味は、
私たちの人生にある真実や美のことを、指していると僕は思います。つまり、人
の想像力が真実や美に触れた時、そこに詩が生まれる。そんなことを言っている
のではないかと、僕は思います。詩とは何か? この問いに唯一答えがあるとし
たら、それを解く鍵はこのW・H・オーデンの言葉にある「聖なるもの」ですね。
この「聖なるもの」という感覚の中に、それを解く鍵があるように僕は思います。



ポエトリーリーディング。今回は佐野自身の曲、「コヨーテ、海へ」。



ソングライティングというのは一体何なのか。そしてそれはどんな意味を持って
いるのか。そのことについて、少し思いを巡らせてみたいと思っています。

まずはソングライティングを4つの定義でくくってみました。
 ・自分を知る作業
 ・共感を求めるための作業
 ・普遍性を獲得するための作業
 ・世界を友とするための作業
1つは「自分を知る作業」。自分にとって良い癒しになる、ということですね。
自分にとって良いセラピーになる。

2つめが「共感を求めるための作業」。ソングライティングという行為は、自分
の経験を引き金にして、そこから想像力を広げていく作業だと言えます。個人か
ら立ち上がって来た歌が、面白いことに時には誰か他の人を激しく感動させたり
することもあります。それは自分の書いた歌が誰かを感動させた、ということで
はなく、その歌に触れた誰かがそこに共感したからこそ、言葉に力が宿った。と
いう状態ですね。そう考えるべきではないかなと、僕は思います。

3つめが「普遍性を獲得するための作業」。自分の個人的経験がそのまま詩にな
るかというと、そう簡単にはいきません。やはりそこには受け手が共感出来るよ
うに工夫をしないといけません。また、これは優れたソングライターの書く詩に
共通して言えることですけれども、とにかくスケッチの力が強いですね。このス
ケッチの力というのは、そのソングライター自身の心の眼を通じたオリジナルな
捉え方、ということですね。当たり前な視点ではなく独自な視点でスケッチをす
る。何か気の利いたことを技術的に言おうとするのではなく、目の前の対象物を
自分の心の眼で出来るだけ正確に写し取るということです。それが作品としての
普遍性を獲得することに繋がる。僕はそう思います。

最後、これです。「世界を友とするための作業」。抽象的な言葉になってしまい
ましたが、1つの仮説として、世界を友とするために、というのはつまり世界と
対立するために歌を書くのではなくて、僕らソングライターは世界と和解をする
ために歌を書いているんだろうということです。詩というものは世界を友とする
ための道具である。そして詩を書くということは、自分が自分であるための確認
の作業でもあります。しかし、そうはいってもこれを実現するには相当の忍耐と
苦痛が伴います。ソングライターは、そこを覚悟しておかないといけません。




良い歌詞とは何か。
まず一つの基準。「他者への優しいまなざしがあるか」。ライティングするとき
の視線を自分にではなく他者に向けていく。書いた詩にそうした意識はあるか。
次に「生存への意識があるか」。肯定的にしろ否定的にしろ、生死について真剣
かどうか。
続いて「言葉に内在するビート(韻律)に自覚的か」。これは音楽を伴った詞の
場合は必須の条件。ここに独自の技術を持っている人が個性的なソングライター
だといえる。
次に「文字だけで読んだ時、ポエトリーとして成立しているか」。優れた歌詞は
言葉だけにしてみても説得力を持っている。
次に「自己憐憫では無い詩」。とにかく陥りやすい罠のようなもので気をつけな
いといけない。個人の感情をそのまま告白したような格好で言葉にしても、それ
は詩とはいえない。ただ、個人的な自分の悲しみや困難を引き金にして、他者に
まなざしを向けていく。そして私の詩から私たちの詩へ視点を広げていければ、
いい詩になる可能性が出てくる。
次に「普遍性がある。時代、性、国籍、年代を超えている」。普遍性を意図的に
盛り込もうとしても、なかなか上手くいかない。誰か他の人から発見されるもの
だと思う。
次に「音と言葉の継ぎ目の無い連続性があるか」。メロディーと言葉がタイトに
寄り添ったソングライティング。
続いて「共感を集めることに自覚的か」。どうして優れた詩や音楽とというのは
知らないうちに人々に伝わるのか。そこには何か共感のメカニズムのようなもの
があるはず。
最後に「よいユーモアの感覚があるか」。もしかしたらこれが最も大事なことか
も知れない。こうした時代、シリアスなだけでは共感は得られない。ギャグでは
ない。ユーモアとはある種、絶望の裏返しではないかと思う。僕らの弱さ、醜さ
を認めたうえで、それでも明日、どうにかやっていこうという感覚。それがユー
モアのセンスだと思う。
良い歌詞とは何かの基準は人それぞれだ。皆さんが思うところの良い歌詞とはを
考えて見て欲しい。


ソングライティングが出来ることの可能性は無限。
全ては想像力。その想像力を有効に使うためには勇気が必要。想像力は各個人に
与えられた強力な武器。
今、僕たちが直面している、この現代という荒れ地を生き抜いていくために是非、
皆さんの中にある想像力を存分に広げてみて下さい。そして、自由なやり方でい
いので、何か言葉を使って表現してみて下さい。そして、その先にある景色とい
うものに、是非、期待してみて下さい。
「夢を見る力をもっと」。これが僕から皆さんに伝えたいことです。




言葉(詩)の三要素。
音 映像 意味
この三つから成り立っていると言っていい。優れた詩はこの三つが絶妙なバラン
スで成り立っている。


学生からの質問。

Q「今までのキャリアの中で、捉え方が変わった言葉とは?」
曲を書いていて、思わず使ってしまいがちな単語、言葉というのは確かにありま
すね。初期においては、街の中に暮らす多感な世代をスケッチした曲が多い。そ
うすると、どうしても「街」という言葉や「夜」という言葉がたくさん出て来ま
したね。やがて自分が成長すると「街」という一つのコミュニティからもう少し
広くなって「国」とか「国家」とか、もっと広くなって「世界」とかね。そうい
うような表現を使うようになっていった。
そうするとソングライターとしては、ハッと思うんですね。最初、街から出発し
たのにいつのまにか、巨大な対象のことを歌ってしまっている。こんな巨大な対
象のことを歌って、時代の良き聞き手と良い関係がとれるんだろうか? 時には、
「僕は抽象的な表現に自己満足していないか」と、こういう反省が入る。そうす
ると、またもう一度、自分が初期によく採用していた「街」とか「夜」とかいう
言葉を使ってもう一度再構築してみるんですね。10年経ち、20年経ち。その繰り
返しですね。
自分の好きな言葉は、やっぱり何か理由があるから自分が好きでしょ? それを
大事にして、それを使っていつも再構築していくという作業が長年のソングライ
ティングの中で、どうやらあるようですね。そんな感じです。



Q「詩の解釈を正しく伝えるか?」
おそらく他のソングライターもだが、書いた詩を100%誰かに分かってもらいた
いと思っている人はいないと思う。書いているうちに、私の詩から、私たちの詩、
になる。自分のことを分かってくれではなく、むしろ共有して下さい。人それぞ
れの経験によって解釈は違うと思うけど、それでいいと思う。


Q「12歳の頃から作詞を始めたそうですが、歌詞の考え方は変わりましたか?」
最近、その当時のノートが出て来た。正直言って、今より凄い詩が何編かあった。
10代の時には、表現が経験を越える時がある。それは直感なのか、あらかじめ僕
の中にあった景色なのかは分からない。経験してなくても、経験したかのように
表現出来ることがある。

この十代に備わっている能力、あるいはその世界の把握の仕方、と言ったらいい
んだろうか……。それは、もの凄く可能性にあふれていると思う。皆さん、多分、
18,19,20。まだティーンの方たちもいると思いますけれども、そして、クリエイ
ティブ・ライティングを目指そうという人たちが集まっていると思いますけど、
どうぞ、今のうちに、出来るだけ沢山、創作をしてみて下さい。今でなければ、
描けない詩。これはかならずある筈です。クリエイティブ・ライティングに興味
がある方、是非、今の時を大事にして、出来るだけ多くライティングしてみて下
さい。大人になった時に振り返って、きっとそこに「あっ、これは一つ私の宝物
だ」「僕の宝物だ」と思える瞬間があると思います。



最後に、皆さんに伝えたいメッセージがあります、と一枚の紙を手にし、朗読す
る佐野。

僕は、言葉と音楽に真剣に向かい合っている同時代の、すべての同業のソングラ
イターたちを擁護する。擁護というのが、ちょっと大げさだとしたら、同情、と
いう言葉に言い換えてもいい。

こうして話している今も、どこか狭い部屋の中で、言葉と格闘しているソングラ
イターがいるかも知れない。

明日になれば、何百万枚もの売り上げを記録するような、そんなことを夢に見て
いるソングライターもいるだろう。

僕も叉、そんなソングライターの一人として、ぼんやりとメロディやストーリー
について考えている。そしてできれば、ご機嫌なポップソングを書きたいと思っ
ている。

ご機嫌なポップソングとは何か?
それは、多くの人たちから愛される歌のことだ。
しかし大抵の場合、それを意識して上手くいったためしはない。

ソングライターたちの自問自答は、いつもこうだ。
「ソングライティングを上手くする方法はあるのだろうか?」
「ソングライティングに、何かルールのようなものはあるのだろうか?」
はっきり言って、曲作りのルールなんてどこにも無いから、結局のところ自分で
見つけるしか無い。

もしあるとしたら、それは
「聞き手には面白がってもらえ」「同業者からは盗まれるように作れ」
そういうことだ。




今回も素晴らしく見応えのある回でした。
これまでに登場したゲストたちの印象的な発言を紹介。こんなに大勢出てたんだ
と改めて懐かしく思い出したりして、最終回に相応しいものとなりました。

佐野元春が、学生たちにとても丁寧に、優しく語りかける口調とその暖かい眼差
しが心に残ります。彼が学生たちに伝えたかったメッセージは、きっと聴講生や
視聴者にも伝わり、新たなソングライターが生まれるきっかけになるでしょう。


この番組はコンテンツとして、とっても優良ですからDVD化、書籍化したらいい
のに。とても意義あるものになると思うのですが。



佐野元春のザ・ソングライターズ(第4シーズン) 
NHK・Eテレ 毎週金曜 23:00〜23:29(再放送は次週木曜 0:30〜0:59 )
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ザ・ソングライターズ シーズン4 Vol.9・Vol.10(ゲスト なかにし礼) へ








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